結婚はしていないという方や、子どもがいないから自分の相続人になるのは妻だけと思っている方へ。
このような場合ほど、思わぬ相続人の出現によって、思い描いていた遺産相続を行えないことがあります。
「終活もしなくて良いし、遺言書も書かなくて大丈夫」という考えは実は間違い!
残される家族のためにも、事前に死後の準備をしておくことが大切です。
子どもや親がいなくても相続人がいないとは限らない!
子どもがいない場合に夫婦どちらかが亡くなったとき、遺産は全て配偶者のものになるというのは実は間違い!
子どもの他にも相続人となる人はいるのです。
〈子どもがいない場合の相続順位〉
配偶者に加えて、
①故人の親
②故人の兄弟姉妹
③故人の甥と姪
※①がいなければ②、①も②も両方いない場合には③となります。
これを代襲相続と言います。
〈代襲相続とは?〉
被相続人の死亡以前に、被相続人の子どもや兄弟姉妹が死亡等によって相続権を失っている場合に発生する相続です。
親も兄弟姉妹も亡くなっている場合には、甥や姪には法定相続分があることになります。
〈遺言書を残さなかった場合〉
仮に遺言書を残さなかった場合には、甥や姪と遺産分割協議を行わなければいけなくなります。
甥や姪が、法定相続分がもらえるまで遺産分割協議に応じてもらえず、他の死後の手続きが進められないというケースも多いのです。
〈配偶者に全財産を残したいなら遺言書の作成を!〉
実は、故人の兄弟姉妹・甥や姪には、遺留分はありません。
そのため、遺言書に配偶者に全財産を相続させる旨を記載しておくことで、兄弟姉妹や甥姪に法定相続分を請求されずに済むのです。
※「遺留分」とは、法律で定められている「遺産を相続する最低割合」のこと。たとえ遺言書であったとしても、遺留分を無視した内容にすることはできません。
配偶者に全財産を相続させる旨の遺言書を夫婦でそれぞれ作っておくことで、基本的に、残された配偶者一人で相続手続きを完了することができます。
義理の親とのトラブルを防ぐ方法(親が相続人になる場合)
遺留分が無かった兄弟姉妹や甥姪の場合と違って、両親への逆相続の場合には、遺留分が発生します。
両親に遺留分があるということは、たとえ遺言書に「配偶者に全財産を相続する」っと記載しても、両親が遺留分を請求してきた場合には断ることができません。
特に義理の両親が相続人となる場合に、「我が子の財産は自分たちのものだ」と主張してトラブルになるケースも多いのです。
〈遺留分を侵さない遺言書を作成しよう〉
両親の遺留分は遺産の6分の1。
つまり、財産を5:1の割合で配偶者と両親に分けるようにすることで、トラブルを防ぐことができます。
〈どうしても配偶者に全財産を残したい場合〉
自分の死後にどうしても自分の全財産を配偶者に残したい場合には、生前に両親を説得して「遺留分放棄」の手続きをしてもらうこともできます。
遺留分の放棄に必要な書類は、
・申立書
・被相続人(自分)の戸籍謄本
・遺留分を放棄する相続人の戸籍謄本
・収入印紙800円
両親が遺留分の放棄に納得してくれた場合には、これらの書類を用意して、家庭裁判所に申し立てましょう。
〈全財産を配偶者に残す際の心遣い〉
配偶者に全財産を残すことについて、いくら両親を説得済みであっても、いくらか「気持ち」として現金を贈与するのが望ましいと言えます。
生前に納得していたとしても、「財産を独り占めした」ように見えてしまい、遺恨が残ってしまうことも。
10万~20万程度で構いませんのでお金を渡すことで、その後のトラブルを防ぐことができます。
「おひとりさま」だから大丈夫は大間違い!
子どもも配偶者もいない「おひとりさま」だからと何も準備をせずに亡くなってしまうと、様々な人に迷惑をかけることになってしまいます。
〈見知らぬ親族に迷惑をかけることに〉
一人で亡くなった場合、警察は6親等以内の親族に連絡をします。
生前会った事のない、はとこや両親のいとこにも連絡することもあるのです。
相続人がいない場合には、相続財産管理人という地域の弁護士が死後の手続きを行います。
その際に、見知らぬ親族が高いお金を払って弁護士に依頼しなければならないのです。
さらに、相続人がいない場合には、亡くなった人の遺産は国のものになり、大変な思いをして手続きを行った親族には1円も相続されません。
〈生前にできる4つの対策〉
理想は、以下の①~③の全てを行うことですが、総額300万円以上かかってしまうため、難しいという方が多いのが現状。
そういう場合には、④の遺言書の書き方次第で誰にも迷惑をかけずに済みます。
①任意後見制度
認知機能が衰えた後の財産管理のために契約できる制度。
自分で後見人を選ぶことができ、裁判所が選任する監督人が後見人の働きを監視してくれるのがメリットです。
デメリットは、財産保全が目的なので、積極的な相続対策はできないこと。
また、死後の手続きを代行することもできません。
②家族信託契約
死後の財産売却などを任せることができる契約。
受託者が、受託者の生前か死後かに関わらず、自由に財産を管理することができるのがメリット。
デメリットは、負担が大きく、受託者を見つけるのが難しい。
役所手続きを代行することはできません。
③死後事務委任契約
役所手続きなどを任せられる契約。
死亡届の提出をはじめとする役所の手続きや、水道やガス、携帯電話などの契約解除を依頼することができるのがメリット。
デメリットは、司法書士などに依頼するのが一般的なので、費用が高くなること。
また、死後の遺産管理の代行を行うことはできません。
④遺言書
遺言書に明記することで、手続きの代行から遺産管理まで幅広く任せることができます。
ただし、信頼できる遺言執行者を選んでおかないと、その内容を反故にされてしまうリスクがあるので気を付けましょう。
〈遺言執行者を決めておこう〉
一番簡単に取り組むことができて負担が少ないのが、遺言書を残すこと。
①~③の契約や制度を使わなくても、遺言書を正しく作成しておくことで、周りに迷惑をかけずに済むのです。
相続人がいない場合には、遺言執行者を行政書士や司法書士、親しい知人や友人にお願いすることも可能。
財産の一部を遺言執行者に遺贈することも記載しておけば、友人や知人にもお願いしやすくなります。
遺言執行者であれば、役所や財産の手続きを一任することができ、見知らぬ親族に迷惑をかけずに済みます。
一度、ご友人や知人、専門家に相談してみるのがおすすめです。
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