民法改正によって最も大きく変わったものの一つが「遺言書」。
新ルールでは、自分で作成した遺言書の保管や、死後に家族が行う手続きが大変便利になりました。
これから作成するという方はもちろん、もう既に作成してしまったという方も、新ルールを活用することで、残された家族の負担がかなり軽減されます。
いつ書いて、どのように保管しておけば良いのか、新しい遺言書作成の方法や注意点を確認しておきましょう!
遺産が少ないから遺言書を書かなくてOK?
「遺産が少ないから遺言書を書かなくて良い」というのは間違い!
どれだけ財産が少なかったとしても、遺言書は必ず残すべき。
預貯金や不動産など、遺言書があるだけで、遺族が行う手続きが格段に楽になるからです。
財産が少ないから、財産の分け方でトラブルにならなそうだからという場合でも、残される家族のために遺言書を作成しておきましょう。
40年ぶりに行われた民法改正で、2020年7月10日から遺言書の作り方のルールが変わり、簡単に遺言書を作成することができるようになりました。
遺言書の種類
遺言書には、2つの種類があります。
①自筆証書遺言
自分の好きなタイミングで作成できるため、ほとんどの遺言書はこの形式で作成されると言われています。
民法改正前の自筆証書遺言は、家庭裁判所による検認を受けていないと手続きに使用することができず、場合によっては2ヶ月程度かかってしまうこともありました。
また、内容に不備が起きやすく、相続手続きに使用できなくなってしまうこともあったのです。
また、検認には以下の書類が必要でした。
・検認の申立書
・故人の出生から死亡までの戸除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本と住民票
・自筆遺言証書の原本
家庭裁判所での検認や、内容の不備について、民法の改正によって変更されたので、この後の「3」の内容をご確認ください!
②公正証書遺言
公正証書遺言は、公正役場で作成する遺言書で、法律の専門家にチェックしてもらいながら作成するもの。
公正役場で保管するため紛失の心配もなく、死後の手続きで使用する際には提出する人の印鑑のみで認められるケースも多く、遺族の負担がかなり軽減されます。
しかし、1通作成するために1回5万円ほどかかるため遺言を作成する側の負担がかなり大きくなってしまうのです。
ではどうすれば良いの?と思われる方も多いと思います。
そこで役立つのが、今回の民法改正です。
2020年7月の民法改正3つのポイント
実は、2020年の改正以前、2019年1月にも遺言書に関するルールの変更がありました。
これまでは、一文字でも間違えるてしまうと書き直しや訂正印を押す必要がありましたが、自筆証書遺言に添付する財産目録はパソコンで作成することが可能になったのです。
そして、2020年7月10日から新たに変更されたルール3つがこちら。
①自筆証書遺言を法務局で預かってもらえるようになった
遺言書を法務局で預かってもらえるということは、家族が遺言書を探す手間を省くことができます。
基本的には、遺言を残す人が住んでいる地域もしくは本籍を管轄する法務局に預けることが可能。
自筆証書遺言を預けるために必要な書類は以下の4つです。
・申請書(法務局ホームページからダウンロード可能)
・本籍の記載のある住民票の写し
・本人確認書類(運転免許証)
・収入印紙(3900円分)
②法務局に預ける際に、遺言書の有効性を確認してもらえるようになった
これまで自筆証書遺言の最大のネックとなってしまっていた、内容の不備をチェックしてもらえるようになりました。
これにより、公正証書遺言書を作成するよりも、格段に安く手軽に遺言書を作ることができるようになったのです。
③家庭裁判所での検認が不要になった
残された家族の負担となっていた、家庭裁判所での検認が不要になったことで、死後の手続きですぐに遺言書が使用できるようになりました。
〈新制度適応の注意点〉
①②③のルールが適応となるのは、新しく定められた書式に則った遺言書であることが条件となります。
したがって、これから作る場合はもちろん、すでに作って用意してある場合には、新しい書式に従って再度新しく作成することが必要です。
〈手間もお金もかからなくなった新ルール〉
2020年7月からの新ルールによって、遺言書の作成に手間もお金もかからなくなったことで、遺言書を作るハードルが低くなりました。
ぜひこの新ルールを活用して、残される家族のためにも、自分で遺言書を作りたいものです。
預けた遺言書を使って相続手続きを開始したい時は?
実際に相続手続きを開始する際に、預けた遺言書を使いたい時には、原本の代わりに「遺言書情報証明書」を手続きに利用します。
〈必要な書類〉
遺言書を預けた法務局に以下の書類を提出して申請することで、必要な部数を発行してもらうことができます。
・故人の出生から死亡までの戸除籍謄本※
・相続人全員の戸籍謄本※
・相続人全員の住民票の写し(取得から3ヶ月以内のもの)※
・収入印紙(1400円分)
※は住所の記載があるもの(法定相続情報一覧図があれば不要)
自筆証書遺言の作り方
新ルールに則った、自筆証書遺言の作成方法を解説していきます。
〈財産目録〉
※①番地がないと登記ができない
不動産は、財産目録で一番注意しなければいけないポイント。
番地まで記載していないと、家の名義変更をしようと思っても、登記申請が認められないことがあります。
※②登記事項証明書のコピーを付ける
登記事項証明書のコピーを付けることで、確実に早く登記を行うことができます。
法務局で、登記事項証明書を取得すれば、詳細な内容を書き写す必要がなくなります。
※③署名は自筆&捺印を忘れずに
自筆の署名と捺印が無いと、財産目録が無効になってしまいます。
この部分だけは必ず自筆で署名しておかないと、名義変更ができなくなってしまいますので、注意しましょう!
〈遺言書〉
※①訂正したら必ず捺印
遺言書を訂正する場合には、捺印が無いと、遺言書の効力がなくなってしまいます。
余白には、変更箇所と変更内容を書き、必ず捺印するようにしましょう。
※②遺言執行者を指定する
遺言書を作成する際に、一番大切なのが、遺言執行者を決めておくこと。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現させる役割を担う人。
相続人ではなく、弁護士などの専門家に依頼しておくことで、名義変更などの面倒な手続きを代行してもらうことができます。
※③付言事項を書いておく
付言事項があれば、親戚なども遺産の分け方に口を出すことができなくなり、トラブルを防ぐことに繋がります。
妻や子への感謝だけでなく、遺産の分け方を決めた理由を書いておけば、残された家族や親戚に納得してもらいやすくなります。
〈書き直したい時は?〉
遺言書を預けた後に書き直したいという場合には、顔写真付きの身分証明書を持参して法務局に申請することで、いつでも遺言書を撤回することができます。
遺言を預けた場所が分からないときは?
故人がどこに遺言書を預けたか分からない時には、遺言書を検索することも可能です。
〈遺言書の検索方法〉
・自筆証書遺言の場合=遺言書保管所(検索はどの保管所でも可能)
・公正証書遺言の場合=公正役場で検索(検索はどの公正役場でも可能)
〈遺言書の検索に必要な書類〉
・故人の死亡が分かる除籍謄本
・手続きする人の戸籍謄本(故人との関係が分かるもの)
・手続きする人の身分証明書(運転免許証など)
もし、家族に遺言書の保管場所を伝える前に亡くなってしまっても、預けておけば安心です。
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大和田税理士事務所では、相続税に関するご相談を受け付けております。
「相続財産への課税が心配」「調べてみてもよく分からない」「身内に頼れる人がいない……」などお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。